第14話

CHAPTER-14「究極新生!機械の国のアリス(前編)」


「・・さて、あなたには新しいボディを用意してあげたわ」

「確かに、私の今の・・・部品が欠け落ちた身体では身動きすらとれませんな」


天導寺邸地下・・・景のもう一つの部屋である、ちょっとした研究室

そこから景と、もう一人の声が聞こえてきた


「咲妃ちゃんの試作タイプだからこの2つしかないんだけど・・」

「・・・背に腹は代えられぬものですからな・・・この際、動けるならばそれで結構です」

「そう?・・じゃああなたはスピードとパワー、どちらをとる?」

「・・もちろん・・・私に必要なのは「瞬発力」、すなわちすべての「速さ」を・・」

「わかったわ、すぐ用意するから待っててね!」


景はそう言うと、研究室から出て行った

・・もう一人の声の主・・研究室のテーブルの上に置かれた「スクラップ」はため息をついた

・・イヤ訂正、ため息のようなものをついた


「・・化石層の中で100余年・・・ようやく見つけました・・貴女を・・・・」


人の形をしたスクラップ・・大きさは景と比べると身長の半分より下・・5~60CMくらいだろうか

足や手は取れて、その大半が「化石」になっている

・・果たしてこれは何なのか?・・そして景は何をしようとしているのか?


・・これは、アリスが大復活するまでに起こった事の一部である・・・

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・・翌日・・


景が戻ってきて咲妃ちゃんも治って(まだどこか悪いみたいだけど)僕らはまた普通の生活に戻っていた

いつものように教室でどんちゃん騒ぎをしているけど・・景から僕は聞かされていた

・・どうやら、新しいアリスはまだ動けないらしい

前のアリス・・壊れる前の状態は普通のバッテリーや燃料で動くんだけど、今度はそうもいかない理由が多々あるとかで・・


・・ま、僕にはわかんないし(汗)


「裕司どのぉ~!!!」

「どうしたの改・・・・・・・・・・・・・都・・(汗)」


教室に入ろうとした改都が、流星牙がつっかえ棒になってずっコケた


「くっ・・・不覚・・・・」

「・・そりゃわかったからよ、裕司に何の用だ?」

「実は前々から思っていた事でござるが・・・」


改都は流星牙を抜いた

・・剣先はまっすぐ僕を捉えている・・!?


「ブルーナイトと私、この不肖・勇輝改都のどちらが強いか・・勝負を願う!!」

「はぁ!?」


な、なんでいきなりそーいう事になるワケ!?


「・・TV見てた連中から言われたんだろ?・・「お前、アル先輩に負けてるくらいだからこいつにも勝てないだろうな~」とか?」


・・こいつというのはどうやらブルーナイトの事らしい・・(一応剣使ってるし)

改都はがっくりとうなだれて言った


「・・すまぬでござる・・武士としては嘲られてそのままというのは恥・・どうか、どうか一度で良いから手合わせをぉぉっ!!

「だから僕は基本的にケンカ反対!!」


とりあえずその場は、逃げてよしとした・・。

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その日の帰り道・・


雫は裕司を斬るとか言い出す改都を引きずり、何とか自宅方面まで連れて行くと六澄の商店街にやってきていた

・・買い食い買い食い~♪・・(←悪いコト)


「おや☆」


惣菜屋50円のコロッケを買い、一口食べようとした時だった

・・隣に違和感のある存在を感じたのは・・


「コレとコレとコレをお願いします」

「はいよ~」


・・なんですか・・この子は・・?


見た所背丈は小学生、髪はツインテールにまとめている

・・しかし服装はメイド服・・それも、どこかの誰かの着ていたデザインに酷似している(汗)


・・少女は買い物を済ませると、つかつかと歩いていった

とりあえず追う事にする雫(←ストーカー)

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「はぁ・・・・早くご主人に会いたいのだが・・・・今のこの外見で私とわかるだろうか・・」


少女はぶつぶつ言いながら、天導寺重工の本社へ向かっていった

・・アレ?・・やっぱり?

咲妃と服のセンスが似てるなぁ・・と思ったら、ホントに天導寺重工の関係者だったのか。

雫はさっさと納得すると、にこにこしながら帰宅した

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翌日早朝。


「景さん、ついに二号機完成したんですね☆」

「へ?」

「咲妃さんに続いてもう一人、ロボットさん作ったんでしょ☆」

「あたし、そんなの作ってないわよ・・・?」


景の様子は特にヘンでもなく、これは本当のようだ

・・もっとも、俺から見たら何か隠しているようにしか見えんがな


「お前、少なくともそいつの事を知ってはいるんだろ?」

「う・・・うん・・まぁ・・・・あたしがあの身体あげたワケだし・・・・・」


おずおずといいごもる景


「そんな事より、サッカーやろうぜ!」

「・・っておい、そんな事で済ますなよっ!?」


大介は久しぶりに姿を見せたかと思えば、コレか・・・

(姿を見ないと思ったらまた遠征してたらしい・・・)

うるさいサッカーバカにはとりあえず明と小麦と、ちょうど顔を出した改都をセットでくれてやって(おい)

俺と裕司、雫は景の話を聞いた


「で?私が見かけたあのフリフリでロリロリな女の子は一体誰なんですか~☆」

「・・委員長・・言葉を選んだほうが・・(汗)」

「あれは咲妃ちゃんの試作2号機よ。・・・とは言っても、身体の方だけで中身はあたしが作ったり、コピーした人格じゃないけど」

「え?じゃあまさか・・・」


裕司の言わんとしている事は、俺と同じ・・

あえて俺は黙っていた


「死んだ人の脳を使ってるとか?」

「・・天導寺流ハリセン術・・奥義ッ!!」



景の手が素早く真上に振り上げられ、いつの間にかハリセンという得物を装備していた!!


「零式コロニー落としッ!!!」


文字通り零距離に詰め寄って、一気に振り下ろされる一撃・・!

・・裕司は床に顔面から叩き伏せられた


「ふ~・・・・そうじゃないのよ、ユウちゃん?」

「・・・(ツッコミが厳しすぎるよ・・と言っている)」

「あたしは頼まれたから2号機をあげただけよ、あの人は仮にもメイちゃんの保護者みたいなものだし・・」

「え?・・・メイの関係者?」

「・・あ、ごめん・・これ以上は口止めされてるから」


景はそう言って何気な~くその場から逃げていった

・・・・次の授業までには戻ってくるだろうが。

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・・僕達はその「保護者」に会いに行くつもりでいた

・・いや、正確には委員長が取材をしたいらしくて、それに同伴するだけなんだけど・・・


おのずと、会いに行くまでもなくあちらから出向いてくれるとは・・


「異形・・!」


いつものように敵の存在を察知して、僕は走り出した

一緒にいたメイちゃんもやはり走る


・・人気のない路地を曲がると、そこには霧が発生している


「チェンジアップ・ブルーナイトォ!!」

「チェンジアップ・ウイングショット~!!」



コンクリートを吸収して、僕とメイちゃんの姿は鎧騎士に変わる


・・さて、敵は・・・


見えない向こうから、腕が伸びてくる

二人とも慣れた動作でそれをバックジャンプで回避する・・

・・タイプはいつものヤツ、レーザーを発射してくる危ないのとは違う!

これなら簡単だと思い、僕らが一撃を決めようとした瞬間だった


「奥義!!疾・風・迅・雷ッ!!!」


どこからともなく駆け込んできた小さな影が、異形の横を駆け抜けていた

それこそアリスにも匹敵する速度で・・


・・おおおぉぉ・・・


異形はうなり声を残し、真っ二つになって四散した

・・・僕たちは変身を解除し、霧が晴れるのを待った


「・・くっ・・この身体には負荷がかかる・・か・・・」


両腕から得物を落とし、膝をつく・・・・

僕もメイちゃんも目を疑った・・その姿はどう見ても、両手に剣を持った小学生くらいの女の子だ

生身の人間が異形を倒した!?

そうも思ったけど、女の子がメイちゃんを見て結論を語ってくれた


「ご主人!・・よかった、ようやく会う事ができました!」

「ふぇ?・・」


メイちゃんは知らない様子

女の子はフラっと立ち上がり、二本の剣を鞘に収めて・・


「私です・・というか、姿が変わってはわかりませんか・・(泣)」


さめざめと泣き出す女の子

メイちゃんがその様子に慌てて、何とか思い出そうと頭を叩き始める


「だ・・誰だっけぇ・・・・えっとぉ・・ボクはぁ・・・」

「メイナード=リィオン、私が主人と認めたセプターであり、ユニオンリバー社長ローディス=スタンフォード様の妹君です」

「・・・・ろーでぃ・・?・・・・わかんない・・」


女の子はがっくりと肩を落としてしまった


「・・・私の名前はガンマ、IFSR-γ・・デストロイと共にあなたの盾として存在する者です」

「ですとろい・・がんま・・・ガンマ!?」


メイちゃんは何かを思い出したらしい

いきなり女の子の両肩をぽんぽん叩くと、ぎゅーっと抱きしめた


「ガンマ~!!また会えたんだね~♪」

「・・・ご主人、一人で大丈夫でしたか?」

「うん、ヒカリもユウジも、みーんな仲良しになってくれたし・・ボクも楽しくやってるよ♪」

「そうですか・・感謝します、裕司様」

「え?僕の事知って・・・」

「もちろんです、恩人である景様の・・そしてご主人の友とあれば」


にっこり笑うガンマ

・・そこへ景達がようやく駆けつけたので、僕らはひとまず天導寺重工本社・エリアルホームへ向かう事にした

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「・・改めて私の名前はIFSR-γ、ご主人とそのご家族を守るために戦っていました」

「・・ふ~ん・・・」

「恐らくワームドライブ中の事故と思われますが、デストロイとドーマは遙か過去の地層に出現してしまいました」


・・「ガンマ」はホワイトボードに説明を書き加えていく

「メイ様だけはごく最近の時代にとばされたようですが、私と機体は転移時のズレで真っ二つになってしまい、事実「大破」していました」


・・要するにデストロイという機体と、ドーマという機体はもうバラバラで使えないらしい


「・・そして機能の一部が復活したのがおよそ100年前・・」

「な、なんかすげー壮大な話だな・・」

「私は近く、景様が埋め立て地の断層から発見してくださったおかげで今このようにあるワケです」


景に集まる視線

そして偉そうに胸を張る景(笑)


(・・・ただ、私としては男性型あるいはマル、アリスさんのようなメカボディがよかったのですが・・)


ぼそ、と聞こえないようにつぶやいて、スカートをつまんでみるガンマ

動きやすいが一応「男性型」のサムライだった彼には厳しい現実のようだ


「・・よかったねメイちゃん、家族が見つかって」

「うん♪」


にこにこ笑いながら、メイは突然つかつかとガンマに歩み寄った


「は・・ご主人、何でしょうか?・・・はっ!?・・あっっ!?」


いきなり彼・・いや、彼女の胸にぺたんと手を触れる

・・一通り触診して・・またにっこり微笑んだ


「よかった、ガンマもボクと同じで♪」

「・・は、はぁ・・・(汗)」


・・大きさ、気にしてたんだ・・


「それとガンマくん」

「は・・何でしょうか?景様?」


メイの手を逃れて立ち上がるガンマ

・・景はホワイトボードに名前を書いた

誰の名前か、一瞬わからないが・・というか、それが名前かも皆には理解できなかったが。


・・「細雪 緋色」・・


「あなたの名前は今日から緋色(ひいろ)よ♪よろしくねー、ひーちゃん♪」

「な゛ッッ・・・・・!?」


ガンマ・・もとい、今から「緋色」は顔面蒼白になっていった


「女の子がガンマなんて関西人みたいな名前じゃだめでしょ?らしい名前にしなくちゃ♪」

「・・関西人ってのは偏見だと思うが」

「西部さん☆」


雫と忍のツッコミは流して、景は続ける


「精一杯サムライっぽくしてみたわよ♪」

「・・で、ですが私は男性型・・・」


部屋の隅に放置してある元・自分のボディを指さすガンマ・・緋色。


「郷に入っては郷に従うものよ♪」


・・結局ガンマ本人の意見は無視されて、景の一存と一部メンバーの賛成によって緋色という名前が決定された


(・・・身体をもらった事を喜ぶべきか、その身体の事で泣くべきか・・)


どちらにせよ彼・・・彼女は、しばらく部屋の隅っこでうじうじするしかなかった・・(汗)

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・・う~~ん・・・どうしよう~・・


夜も遅く・・もう次の日の朝になるくらいの時間・・

あたしはみんなが帰った後で、色々なデータを洗いざらい調べ直していた

・・色々なデータというのは、アリス・・いや、新生アリス「弐式」のためのデータで・・

潰された左半分を修理+改造して完成した新しい基本フレームに、新しい外装と今までと全く違う装備を施した究極のアリス!

・・だけどおかげでこの子は今、深刻な問題を抱えてしまっている

・・それは「エネルギー問題」・・

最強の力を得る代わりに、この子をおなかいっぱいにするためのエネルギーが絶対的に不足している

まだ黒いシートがかけられたまま、その間から「目」だけを覗かせているアリス弐式


あたしは前より数センチだけ大きくなった機体を見上げながらため息をついた


「・・眠れませんか、景様」

「あ、緋色ちゃん」


・・緋色ちゃん(ガンマくん)はつい数時間前の決定で呼ばれ慣れないのか、苦笑いを浮かべている


「・・思えば私がこうして新しい姿でご主人と共にあるのも、このアリスという機体のおかげなのですな」

「まぁそういう事になるわね・・」


アリスの改修のためにアイデアを探して、あたしは埋め立て地から排出されていたスクラップを物色していた

その時・・偶然掘り起こされた断層の中から、彼を発見した・・

その場に居合わせた事も、そこで彼の声を聞いたのも全くの偶然・・

・・ガンマくんの記憶していた情報のおかげで、あたしはアリスを今の「弐式」にする事ができた


でも、ガンマくんから得た情報には残念ながら、一部の欠損があった


「後はエネルギーだけなのになぁ・・・・」

「確かに、これだけの装備となると現状では原子力でも使わない限りは・・」

「・・今あるデータだけじゃそんなものエネルギーにはできないし・・・」


あたしと緋色ちゃんは腕組みをして、首をかしげた


「・・・・・・う~ん・・・」

「せめて私の記憶が完全ならば、ギアの動力を流用して動かせたかもしれませんが・・」

「・・まぁ、仕方ないわね・・・・」


あたしはふっと考えを切り上げて、アリスの周囲を照らしていたわずかな電源を落とした


「今日はもう寝ましょう、緋色ちゃん♪」

「それが良いかと思いますよ」


緋色ちゃんはふっ・・と笑った


「時に景様」

「なに?」


階段を上ろうとした時・・不意に緋色ちゃんが言った


「・・私の刀の修理は・・どうなったのでしょうか?いつまでも代わりの刀というのも・・」

「ああ、それなら・・」


あたしは少し歩いて研究室まで戻り、入ってきた彼女にそれを見せた


・・二本の鞘に収められた、長短つがいの刀


「これは・・これが・・炎皇と雹星?」

「折れてバラバラになってたのをとりあえず使えるように、この形で打ち直してもらったの」

「素晴らしい・・・なんという匠の技・・・」


恍惚とした表情で刀を眺める緋色ちゃん

鞘を両腰に収めると、その感じを確かめる・・


「・・以前の刀身はあの身体のための形状でしたからな・・今の私にはこの方がとても良い、ありがとうございます景様!」

「いやぁ、気に入ってくれてよかったわ♪」


・・ホントはガンマくんの剣だと気づかずに、面白そうだから打ち直して飾っておこうかな~とか思っていたんだけど~

さすがにそこの部分は口に出せなかった(汗)


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・・そのころ・・


フランチェスカ=クロードは横浜・・みなとみらい21にいた

久しぶりにMI-6からの任務を受けてやってきたのだが・・


・・ランドマークタワーの前を通り抜けて、港に隣接する倉庫街に出る

入口にいるマシンガンを構えた見張り二人に、サイレンサーを使って一発、二発・・

さっと近づいて倒れた二人の持ち物を確認する


(・・・この倉庫ですね・・)


チェスはMI-6から「日本で要人誘拐を行おうとしている組織の発見、壊滅」を命令されている

・・その組織の本拠地は転々としていて、今はここにあるらしい


しばらく歩いた所で、広い倉庫の中に明かりが灯っている・・

チェスは両手に得物を構える

P99とダブルイーグル、二つの銃が明かりに煌めき・・チェスが飛び出すと同時に咆える!!


「ぐぉっ!?」

「あぁぁぁっ!?」



正装の赤いスーツ・・大人のようにびしっと決めたチェスは、まさにプロの活躍で次々と組織のメンバーを射殺していく

・・15・・14・・13・・12・・・


当初20数人を数えたメンバーも、瞬く間に数を減らしていく

それどころか、銃撃の真ん中にいるハズのチェスには、かすり傷一つない!!


「諜報部の犬め!!」

「・・その犬に食べられる気分はいかがですか、テロリストさん?」



チェスは頬に飛んだ返り血を拭きながら、最後に残った一人と銃を向けあっている


「・・もっとも、あんまり美味しいものでもありませんがね・・・」


フ・・と口元が笑うと・・


どぉ・・ん


最後の銃声が、倉庫街に響き渡った・・・・・

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翌日・・輪中屋上

時間は2時間目の授業中だが、そこにはチェスと忍の姿があった


「・・というワケでその組織の本拠地は壊滅させたのですが・・」

「肝心の主犯格メンバーはいなかった、そういう事だな?」


忍は時々こういった話に首を突っ込んでいる

・・本当に関わったのは夏休みの一件だけだが・・相談に乗るくらいの事はしていた


「狙っている要人のリストは入手したのですが、気になる人物が2名ほどいまして・・」

「ン・・このリストにか・・?」


チェスから渡されたリストをペラペラとめくっていく忍

・・すると・・その名前が連続でそこにあった


なんと二人とも忍のよく知った人物・・!?


「舞人さんに・・・すばるちゃんっ!?」


忍は即座に、チェスへの協力を願い出た

何があるにせよ、あの二人が危険である事に間違いはない!!


「フ・・俺の事なら心配いらないさ・・(効果音付)」


・・訂正、一名は絶対大丈夫・・・。


「チェス・・俺も協力させてくれないか?」

「すばるさんですね。」


忍の顔が真っ赤になり、ボンという音がして煙が吹き出す(表現)


「な、なに・・なに言ってるんだいチェスくん?俺は別にぃ~・・」

「・・雫さんのリサーチと私の独自情報です」

「・・・・隠し事はできねぇか・・・ったく・・しょうがねぇ、この際だから言わせてもらうぜ!!」


忍がいきなり両腕を組み、仁王立ちになったのでチェスは一瞬だけ眉を動かした


「俺はあの一件以来すばるちゃんに一目惚れしてんだ!!また変な奴らが狙ってくるなら俺が必ず守ってみせる!!」

「わかりました・・では、早速今日の午後にでも行動開始と行きましょう」

「フフ・・確かに聞かせて頂きました☆」


がたたんっ!と忍が体勢を崩す

いつの間に現れたのか、雫がそこでメモをとりながら会話の一部始終を聞いていたのだ!!


「早速クラスのみなさんにこのことを・・」


ずどっ!!

雫のスカートが飛んできたクナイによって、壁に打ち付けられた


「ひっ・・!?」

「・・・今何か聞いたか・・・・?」


忍の目は普段ののほほんとしたおバカな雰囲気ではない

・・刺客として放たれた忍者の目だ・・間違いない、自分は殺される・・・

現にもう、喉元に短刀がつきつけられていた


「・・・どうなんだ、喋るのか?死ぬのか?」


刃を持つ手にじわじわと力が入ってくる・・


はぅぅぅぅっ・・た・・助けてくださいチェスさぁん~(泣)」

「私は忍さん側ですし秘密厳守が仕事ですから・・」



チェスもダブルイーグルを抜き、雫の額に当てる始末

いよいよもって雫は泣き出した


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい~!!他言は致しません、お願いですからお慈悲を~~っ!!!」

「・・どうします忍さん?彼女の口からするといつものように他言するおそれがあります、今の内に始末しないと忍さんの秘密が・・」


かなり怖い事を淡々とした顔でつぶやくチェス(場慣れしているから当たり前か)

・・もうそれだけで雫は死を覚悟した


「・・どこからにせよ、今この事が知られたら死んでもらう・・忘れるな!」

「は、はひぃ~・・・」



忍はチェスの手を制すと、そのまま屋上を立ち去った

チェスはしばらく雫の目を見つめて・・


(・・忍さんも甘い方ですね・・)


ぼそぼそつぶやいて、すたすたと去っていった


雫はそれからしばらくの間泣き続けていたという・・

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9月末日・・

この日、僕の周りの世界は一変する事になる・・・


夏休みで実感した異形との戦いの難しさ、みんなの考えている事、みんなの状況、僕の学校の状況・・そして僕の状況

そういったすべてが、ほんの一日の出来事で新しい方向へ転がりだした


僕は一週間前に福引きでとあるコンサートチケットを手に入れていた


・・「白銀すばる」のコンサート・・そう、思えばここから偶然は始まっていたのかもしれない・・・


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